tsukumo

2021年7月13日火曜日

FIREを目指すことの個人的考察(元も子もない話)

 最近は、アーリーリタイアやセミリタイアの事を、FIRE(ファイナンシャルインディペンデンスリタイアアーリー??)というらしいです。


なんか、格好いい呼び名になりましたね。英語でFIREというと会社をクビという意味もあるからそれとかけて言葉遊びしてるのかもしれませんね。

このFIREですが、どういう定義なのか、よくわかりませんが、界隈で有名人の○○サラリーマンさんのツイッターなどを覗かしてもらうと、どうやら配当金生活的なものを指しているというようにお見受けしました。

FIRE=配当金生活と定義した場合、それは現実的に目指すに値するのか?というのが私の率直な意見です。

配当金で生活するために必要な資金を単純に考えれば、1億円の資金を3%の配当金株に全額ツッコんで約300万円(税抜き前、税抜き後約240万円)の年間配当金を得ることになります。税引き後で月に20万円が手元に残って使ってよい金額になります。


月に20万円といえば、大卒初任給くらいですかね。一人なら普通に暮らしていけますね。家賃を払って、水道光熱費、通信費、少しは貯金も出来るかもしれません。

ここで、賢明な方なら、1億円を作る能力がある人間が、月に20万円を得るためにお金を貯めるという矛盾に気付くのが普通だと思います。

たとえば、30歳で1億円貯める能力がある方が、1億円を作った仕事(ギャンブルなど?)を棄てて、隠居生活に入るのはおかしいと思います。それだったら40歳まで働いて2億円にして、家庭も築いて一般的な幸せと有り余る富を手に入れようと考えるのが普通だと思います。

いや、マーケットで儲けて何億か貯めて配当金に移行して隠居生活するんだ、という話もありますが、それはただの個人投資家ですから。そのまま個人投資家として専業になるだけだと思います。

基本的には、1年に使うお金×平均寿命にインフレ率(見込み)を加味したものが、人生に必要な金額なわけで、どのレベルの生活をしていく(1年に使うお金)かで人生に必要なお金は変わっていくでしょうし、早めに隠居したら最初に設計した生活レベル以上になるのは中々難しいように思います。それならば、仕事をしながら投資もしていく方が、仕事が偶々当たって、生活レベルが上がる可能性もあるので賢明な気がします。

こういう事を考えれば、一般的な賢明な日本人は、巷で煽られているほどFIREに関心は無いと思いますし、本気で考えているような人は、ある種、そういう程度の人のような気がします。

あ、投資をしない方がいいかと言われたら、当然、株に資産を突っ込んだ方が個人的にはいいと思いますが。











2021年7月3日土曜日

読書感想文4  「鉄・銃・病原菌 上下巻 ジャレット・ダイアモンド著」

 この記事を書いているのは、2021年7月3日です。


先月、読んだ本の中で、フムフムしてしまったのが「鉄・銃・病原菌 ジャレット・ダイアモンド著」です。

この本は、名著であるという人も多く、一回読んでおく方がいいな、というところから読み始めました。新型コロナというウイルスが流行り、中国界隈が軍事的にきな臭く、アメリカと中国の間で経済覇権争いが起こりそうな現代に読んでおいた方が良いとおもったのもあります。しかし著者のダイアモンドさんが、どう言う人かもいまだに良くわかっていません。


本の導入部で、オセアニア地域を調査して回る著者とそのガイドをしてくれた原住民(狩猟採集を糧にして生きている部族の人)の話から始まるわけですが、著者の、同じ人間なのに近代化した所謂文明国に住む人と原住民であるガイドとの暮らしぶりに差がある事に疑問に感じて、その原因をこの著書で出来るだけ追求していこうという決意から始まります。


著者によれば、文明国は、文化的で先進的技術を持っていて、原住民は、昔ながらの狩猟採集を糧にしているので全てにおいて文明国に遅れているという一般的な普通の人の感覚は違っていると定義しています。(それでも率直に言うと遅れてるんですけど)

たとえば、原住民は地図を持たずに島の案内ができたり、狩りに使う罠などに詳しかったりするわけで場所によっては文明国に住む人の方が不利だったりするので、どちらが優れてるという事はないという事らしいです。

本の全体像としては、人類の歴史を包括的に解説していくという事になります。その中で、地域によって、そこに住む人類の進化の方向性の差異に注目して、所謂文明国が、未開の地の原住民を排除していく過程なども描かれていきます。

読み進めていくと、まず最初に私の頭をトンカチでぶっ叩かれるようなお話になります。

私の感覚では「狩猟民族は、勇敢で戦闘的で強い」だったのですが、著者の説によると、「農耕民族の方が技術が発達するから最終的に強い」という話でショックを受けました。

狩猟民族は、その日暮らしなわけで、農業畜産を覚えた民族に比べて、養える人数が少ないわけで、穀物を保管するという技術もほとんどないので、社会全体に余裕がなくなる。つまり社会に余裕が無ければ、政治や宗教、衣類屋鍛冶屋などなど、狩猟以外の職種に専業でつくことは出来る人はいないので、技術的に発展するのが難しいというわけです。

この話を読んでいて、私の頭によぎったのは、現代日本に於ける狩猟民族ともいえる派遣労働者であったり、株のデイトレーダーと長期投資家の事だったりします。

結局、所謂、国家などの集合体が発展していくためには、その構成員が、安定した生活を送れるような職業を創出していくのが大前提で、全体で積み上げた余剰の富を社会全体の発展に使っていくのが王道で、派遣労働などを増やしていこうとしている現代日本は、恐らく間違えているんだろう、という風に思いましたね。

また、デイトレーダーと配当長期投資家との差にも、思いを馳せました。カツカツの資産でその日の食い扶持を稼がないといけないデイトレーダーと半期ごとにある程度配当金に期待できる長期投資家でも、忙しいのはデイトレーダーでしょうが、企業研究を余裕をもって行えるのは長期投資家でしょうから、その差は開いていくのは容易に想像できます。


と話がそれましたが、「鉄・銃・病原菌 ジャレット・ダイアモンド著」は噂にたがわず名著だと思います。ただ、歴史学でも新しい発見があったり学説が発表されることが日常なので、著者のすべてが正しいというわけではないでしょうが、人類の発展の歴史をある種哲学的ともいえる芯の部分で読者が納得いく形で解説してくれている本でした。