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2021年7月3日土曜日

読書感想文4  「鉄・銃・病原菌 上下巻 ジャレット・ダイアモンド著」

 この記事を書いているのは、2021年7月3日です。


先月、読んだ本の中で、フムフムしてしまったのが「鉄・銃・病原菌 ジャレット・ダイアモンド著」です。

この本は、名著であるという人も多く、一回読んでおく方がいいな、というところから読み始めました。新型コロナというウイルスが流行り、中国界隈が軍事的にきな臭く、アメリカと中国の間で経済覇権争いが起こりそうな現代に読んでおいた方が良いとおもったのもあります。しかし著者のダイアモンドさんが、どう言う人かもいまだに良くわかっていません。


本の導入部で、オセアニア地域を調査して回る著者とそのガイドをしてくれた原住民(狩猟採集を糧にして生きている部族の人)の話から始まるわけですが、著者の、同じ人間なのに近代化した所謂文明国に住む人と原住民であるガイドとの暮らしぶりに差がある事に疑問に感じて、その原因をこの著書で出来るだけ追求していこうという決意から始まります。


著者によれば、文明国は、文化的で先進的技術を持っていて、原住民は、昔ながらの狩猟採集を糧にしているので全てにおいて文明国に遅れているという一般的な普通の人の感覚は違っていると定義しています。(それでも率直に言うと遅れてるんですけど)

たとえば、原住民は地図を持たずに島の案内ができたり、狩りに使う罠などに詳しかったりするわけで場所によっては文明国に住む人の方が不利だったりするので、どちらが優れてるという事はないという事らしいです。

本の全体像としては、人類の歴史を包括的に解説していくという事になります。その中で、地域によって、そこに住む人類の進化の方向性の差異に注目して、所謂文明国が、未開の地の原住民を排除していく過程なども描かれていきます。

読み進めていくと、まず最初に私の頭をトンカチでぶっ叩かれるようなお話になります。

私の感覚では「狩猟民族は、勇敢で戦闘的で強い」だったのですが、著者の説によると、「農耕民族の方が技術が発達するから最終的に強い」という話でショックを受けました。

狩猟民族は、その日暮らしなわけで、農業畜産を覚えた民族に比べて、養える人数が少ないわけで、穀物を保管するという技術もほとんどないので、社会全体に余裕がなくなる。つまり社会に余裕が無ければ、政治や宗教、衣類屋鍛冶屋などなど、狩猟以外の職種に専業でつくことは出来る人はいないので、技術的に発展するのが難しいというわけです。

この話を読んでいて、私の頭によぎったのは、現代日本に於ける狩猟民族ともいえる派遣労働者であったり、株のデイトレーダーと長期投資家の事だったりします。

結局、所謂、国家などの集合体が発展していくためには、その構成員が、安定した生活を送れるような職業を創出していくのが大前提で、全体で積み上げた余剰の富を社会全体の発展に使っていくのが王道で、派遣労働などを増やしていこうとしている現代日本は、恐らく間違えているんだろう、という風に思いましたね。

また、デイトレーダーと配当長期投資家との差にも、思いを馳せました。カツカツの資産でその日の食い扶持を稼がないといけないデイトレーダーと半期ごとにある程度配当金に期待できる長期投資家でも、忙しいのはデイトレーダーでしょうが、企業研究を余裕をもって行えるのは長期投資家でしょうから、その差は開いていくのは容易に想像できます。


と話がそれましたが、「鉄・銃・病原菌 ジャレット・ダイアモンド著」は噂にたがわず名著だと思います。ただ、歴史学でも新しい発見があったり学説が発表されることが日常なので、著者のすべてが正しいというわけではないでしょうが、人類の発展の歴史をある種哲学的ともいえる芯の部分で読者が納得いく形で解説してくれている本でした。















2021年4月9日金曜日

読書感想文 3

 「統計学 最高の教科書  今野 紀雄 著」です。

投資をしていて、統計というのは毎日のように発表されて、投資家は、その統計を見て、結果が良かった、悪かった、買いだ、売りだ、とやるわけですが、実際、その統計にどんな意味があるんだろう、という答え探しに選んだ本になります。

まず、最初で躓きますね。恐らく、非常にわかりやすく統計学、確率などを書いていて、少しでもこういうのをかじったことがあれば、理解しやすいのでしょうが、中々、理解するのは私には難儀です。

私のような素人が、統計と聞くと、最初に思い浮かぶのが、「平均」です。この平均は、統計の対象になる数字に、あまりバラツキが無ければ機能しますが、極端に格差があると現実に感じるのとは違う統計結果になってしまいます。(例えば、二人の平均月給が、一人は100万円でもう一人が20万円と言った場合、平均給与は60万円になってしまいます。)

そのため、統計を取る場合、場面ごとに、中央値、最頻値、平均値といった「代表値」を選んでいくそうです。

そして、偏差や分散(平均偏差)という統計になっていくみたいです。

と第一章は、こんな感じで、第二章は、確率「P(A)」ですね。これは、株式投資という丁半博打を普段からしている人間にとっては非常に興味深いはずです。


何度か読み返してみないと、何かの時に咄嗟に思い浮かぶような使えるモノにならないような気がします。(そうするつもりで)

本の基本的な構造としては、数式は多いですが、説明文と数式とは別に分別して書かれていて、説明文だけでも十分理解しやすいように書かれているので、統計学が初めての人もとっつきやすと思います。数式の方は、知っていることに越したことは無いのでしょうが、知的好奇心を満たしたり、私のように何かの統計の意味合いの根本を知りたいという方には、説明文だけでも良いのかもしれません。










2021年3月20日土曜日

読書感想文 2

 この記事を書いているのは、2021年3月20日です。

昨日は、日銀金融政策決定会合で、債券金利の幅が少し広がったり、ETF買いに対するスタンスが変化したりとマーケット参加者は、それぞれ思うところがあると思います。

本日のお題は

「倒産の前兆 帝国データバンク情報部 著」の読書感想文です。

株式投資をしていると、たまに、というかよくと言ってもいいですが、市場から退場する企業に出くわします。ある時は、あんまり知らないような企業が債務超過で倒産したり、なんとか会社を買い取ってもらったりという事が、日常にありますし、たまによく知っている有名企業もやらかしてしまう事もあります。

私の仕事柄(無職ですが)、長期で企業の株を持つことが多いですが、一番イヤなのが、企業倒産ですね。

株式投資の基本システムからいえば、最終的にすべての責任をお金で取るのは株主というルールの上に成り立っていますので、仮に企業が倒産したら、その保有株は、紙屑以下、データから消えて無かったことになりますし、基本的には株式に出資した分のお金は返ってきません。

私は、今までに倒産した会社の株を持っていたことはないですが、それはただ運が良かった、だけとも言えます。

というわけで、株が上がる企業を普段は探しているのが投資無職ですが、倒産する企業について少し考えておいた方がより賢明だろうという事で、この本を取った次第です。

この本の内容は、一言でいえば、倒産した企業の事例集です。倒産企業だからといって、創業以来事業が上手くいってなかったという事はなく、むしろ、事業が軌道に乗っていたのにかかわらず、債務超過に陥り、金融機関にも見捨てられて、買収交渉も決裂して倒産に至るわけですが、その過程を淡々と紹介していく本です。

ただの事例集ですが、センシティブな人が読むと気持ち悪くなるかもしれません。5ページとか8ページで一社潰れていくストーリーが連続して綴られていくわけですから。

日本海洋掘削が潰れたのとか、知りませんでしたし、江守グループも潰れてたんですね、というくらい、投資無職にとっては市場から退場した企業には興味がなくなるんだ、と実感しましたね。



ここからは、全体を通しての私の感想ですが、当然ですが、創業何百年の会社でさえ潰れるときは来ます。今、絶好調の企業でもいつかは潰れるのでしょう。

企業にとっては、真っ当に企業活動、経済活動をするのは当然のこととして、社会や行政制度、顧客のニーズ、ありとあらゆる事業環境に影響を受けます。この事業環境というのが、企業が生きるか死ぬか、の分かれ道になるわけで、如何に時代、事業環境に対応できるか、というのが老舗企業になれるかどうかの分かれ道なんだと思います。

そして、事業環境に対応して何十年、何百年と事業内容を変化し続けても、何かの拍子で時代に合わない時が来るのだと思いますし、その時が企業活動の終了になる時なんでしょう。

事業内容の変化についても、時代や事業環境に対応するつもりで事業内容を変化させようとしても、それが不正解だと、即、退場になる場合も多く、企業運営は非常に難しいですね。

昨今だと、SDGsだったり、環境負荷の問題、次世代のエネルギー問題、食料問題、電気自動車、など事業環境の大幅な転換を求められている企業は多いように思います。上手に、新たな事業を創出できれば、企業は生き残りますし、対応できなければさようならの厳しい世界でしょう。

日本企業は、アメリカの企業と比べ、事業環境に対応して事業内容を変えて生き残るところが多いように思います。アメリカは一山当てたら稼ぐまくって、事業環境が企業に合わなくなったらさようならが多いように思います。Microsoftとかアップルとかは、環境に対応するようになってきていますが。

こういう周りの環境によって影響を受けるのは、なにも企業だけではないですし、企業人でも30年以上の勤労年数の中で、色々と変化があるわけです。例えば、パソコンで資料作れ、だとかハンコは廃止だとか、飛び込み営業は難しくなって反響営業メインになったり、と。投資無職にしても、投資に課される税金が変わったり、日銀やGPIFの金融緩和や日本株の買い入れ額や比率の変化なんていうのは、よくある事です。

個人だとしても、自分はちゃんとやってるかを時折チェックしないといけませんし、周りはどうなってるのかを注意深く観察しないといけないでしょうし、それに合わせて変化し続けないといけないんだと思いました。

感想文だけに内容の説明よりも私の勝手な感想の方が多くなってしまいました。

内容は、あくまでも倒産企業の事例集です。




hontoという書籍サイトは、超おすすめですね。大日本印刷が運営しているという事業環境に合わせて変化した賜物の書籍サイトだとも言えますね。




















2021年3月13日土曜日

読書感想文 1

 この記事を書いているのは、2021年3月13日です。

日経平均は3万円を割ってしまいましたね。いろいろと考えさせられる相場ですね。

本日から、新シリーズで読書感想文シリーズをやろうと思います。続くかはわかりませんが(笑)

第一回は、「生涯投資家 村上世彰 著」です。

私は、所謂、「投資家」が書いた本はほとんど読まないようにしています。理由は、変なバイアスがかかってしまうからですね。この本のほかにもう一冊、イギリスの財務長官か何かをしていた方(全く覚えていない)の書いた本を読んだ覚えがあります。あと、〇空さんのFXムックは読んだことありますね。(笑)

そんな考えの私が、稀代の投資家(?)でインサイダー取引で逮捕されて、最近では娘さんが旧村上ファンド系として投資ニュースのヘッドラインに登場する界隈のど真ん中の村上さんの本をなぜ、手に取ったか。理由は、気分ですね。適当です。

本の中身は、というと投資に対する具体的な方法論は書いているわけでもなく、基本的な考え方(実は重要ですが)が少し書いてあるだけで、村上さんが、投資をなぜ始めて、もの言う投資家になったのか、彼の表面上の信念とそれに対する自己評価の一冊のように感じました。

村上さんは、お金を増やすのが好きな少年だったそうで(父親の影響もあって)、自分で投資をするようになったのですが、官僚になる頃には、コーポレートガバナンスの研究をしだして、企業と株主の関係を正常にしたいと思ったそうです。

中盤は、世に出た彼の投資案件たちに対する自己評価ですね。彼にとっては失敗、悔しい思いのオンパレードだと言っていますが、投資としてはほとんど儲けてエグジットしているみたいですね。では、何に悔しい思いをしたか、「自分の信念であるコーポレートガバナンスを受けいられてもらえなかった。」という事でしょうね。

現在の日本のマーケットでいえば、コーポレートガバナンスもスチュワードシップコードも一応存在するわけで、村上さんが、その半生をかけて訴えて、戦って、微妙な理由でインサイダーで罪に問われたのも現在そうした制度が採用されている一因ですし、現在の参加者は少しは彼に感謝しないといけないと思いますね。


で、ここからは底辺投資家の感想ですが、官僚さんって会社の社長と会食するんだな、という事や、投資対象の経営者やら従業員、既存株主に直接会いすぎるのもリスク高いな、ですね。ネットの画面越しでやってる投資家とリアルで企業調査してる投資家とでは、全く違う人種ですな。

ちなみに解説は、池上彰さんが書いています。どう取るかはそれぞれですね。

あとは、本全体としては、本人談なので、どこまでが正しい情報かは調べようがないですね。

読み物としては面白くて、サラッと読める本でした。